私は首を縦に振ってしまったあなたを目敏く見つけて
「お客さん、いいですか」
と話し掛けます。この時は、まるで、会場にあなたしかいないように話し掛けます。表示されたドキュメントをグリグリとスクロールさせたり、倍率を変えながら、大きくしたり小さくしたりして、
「このようにスクロールやズームが速いのにビックリしてはいけないんです。今どきのパソコンはどれも、スクロールやズームは速いんです。大切なのは、ハイ見てください、ページ捲りの速度と表示の画質なんです。」
ここで、スクリーントーンを多用した漫画を最も大きく表示して、
「見てくださいスクリーントーンの1ドット1ドットが再現されてますよね。そして、縮小していくと、ほら」
と大型ディスプレーを指差しながら、
「ほとんどモアレが出てないでしょ。ここのスクリーントーンのところは、きれいなグレーになっているでしょ。」
と、あなたに同意をもとめると、あなたは自分の役割を演じてしまいます。
オーディエンス全体をみまわして、
「さて、ここで、本日の動作環境を説明します。」
と、初めて動作環境について切り出します。ここでこの説明をするのは2つの理由があるからです。朝のテレビのワイドショーの中には、番組の最初に「おはようございます。」とは始めずに、最初からコンテンツを放送し「何の番組だろう」とザッピングの指を休めるその瞬間の視聴率を稼ぎながら、番組が少し過ぎて佳境に達したところで、「おはようございます」と挨拶をいれます。番組の最初からいつもの顔ぶれの挨拶では、「ほかの番組を見てください」と言わんばかりになってしまうのです。テレビ人は、長い間の視聴率競争からこのような構成を学んできたのです。これと同様のことが、デモでもいえるのです。デモのはじめから、「それではデモを始めます。え〜、始めに、本日の動作環境です。」としたのでは、お客様は集まりません。これが第一の理由です。
第二の理由は、こうです。ここまでデモすると、「何だ、何だこの人だかりは」とお客さまが集まりはじめます。つまりデモの最初を見ていないお客さまが増えてくるのです。私は、最初から見ている人たちを退屈させずに、しかも、「超」ファイリングシステムにとって重要なことをもう一度説明したいのです。これがうまくできれば、後から来たお客様も途中からデモが楽しめ、最初から見ていたお客さまは、さらに驚いて、楽しむことができる。その取っ掛かりが動作環境の説明なのです。 ここで、動作環境について説明をするわけですが、こういう説明は、実質、ものの18秒くらいで済ませなければいけません。それでも、お客さまにとっては、結構退屈なものです。これから、いろいろ話したいのに、ここで帰られたら折角恥じを忍んでここまでデモしてきたのに、元も子もありません。ここでも、退屈ですから、環境はこちらを見ていただきたいのですが、大事なことは、説明しながら、「ビックリしないでくだい」とか、「そこのお客さん、隣の人とおしゃべりしないで、こっち見て」とかという言葉を挟んで、お客さまの注意を喚起したり、笑いを誘ったりすることです。 |